想像力の天敵
グリッグリッっと靴の皮が、歩くたびに足の甲にめり込んできて痛い。この靴は買って日が浅いから、皮がまだ足の形に馴染んでいないのだ。この靴も私と同じように、他と打ち解けるのに時間がかかってしまうタイプなのだろう。
私は、痛みを避けるために足を引き摺るように歩いたり、ガニ股で歩いたりするが、一向に痛くない歩き方が見つからない。皮が馴染むまで我慢するしかないのか、それともこの痛みはこの靴を履き続けている限り無くならないのか、などと考えている時にあることに気づいた。
「私は今、想像力を失っている」
自分の痛みに気を取られすぎて他のことを考えられなかった。その証拠に、前を歩く人の手の平からヒラリと落ちていったレシートを拾い上げようとも思わなかった。彼は捨てたつもりだったのかもしれないが。
痛みは思考を独占し、想像力を奪ってしまう。
想像力の遮断物は痛みだ。
痛みを感じている人は、他のことを考えている余裕がないから、他人を傷つけやすい状態なのだ。